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211 アキラとユィナ                             
 ユィナは、兄から聞かされ、父を殺したのは自分。兄は身代わりに警察へ出頭した。その真実の告白に生きる気力を無くした様な生活を送り、頑張って通っていた服飾学校も不登校がちになっていた。義理の兄がこの屋敷に来てから実の母との絶縁を示し、変わり果てていく養女に、ヒロミたちは兄に何か強要されているのだろうと感じてはいたが、何を聞いても精一杯の笑顔で返される短い感謝の言葉たち。それ以上何も問い正せないままユィナの様子を見守っていた。

 朝、家主から聞かされたこと、「今日は母屋に大事な客が来るから」。彼女がそう言う時、近寄ってはならないと言う暗黙の了解があった。昼もとうに過ぎた頃、洗い立ての大量のシーツをワゴンで運んでいたユィナ。大きな飾り窓が並ぶ廊下から、ボロ車で乗りつけ、服装も自由気ままな自分と同年代だと思わしき彼らを遠目に見て知っていた。でもそれがヒロミの言う客にはとうてい思えないでいたが、夕方過ぎの今、広い庭に続くテラス、はしゃぎ回り、大声で笑いあう彼らの姿が煌々と漏れる明かり、がんがんかかっているレゲエの音楽に合わせて踊る影が揺らいでいる。
「あれが客? 俺らと大して変わらないガキだろ…、こっちはこれから仕事だ畜生。うざい、あいつら何者だ?!」
 起き抜けで不機嫌な男、自室から見える光景にぼさぼさの髪で怒鳴った。
「分かりません…。あ、アキラ様おはようございます。何か冷たい飲み物でも持って来ますか?」
 薄暗い部屋、彼の食事を用意し、起こしに来たユィナは小さな声で答えた。
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