188
妹兄188ミィナとサイトウ
ミィナはサイトウの勤める大学病院で特別に割り当てられた個室に入院させられ、症状がいつ悪化しても対処できるよう、仮住まいのような暮らしをしていた、定期的な検査日以外は、病院側の規則とは無関係に食事や睡眠、外出も自由になっていたが、朝は看護師がやって来て、身の回りこともやってくれるのを申し訳なく思い、自分でやると言っていたが、いつも断られていた。
「シーツだけはね変えさせてね、じゃないと仕事してるのって言われちゃうし、ここでミナヨさんに愚痴聞いて貰えるのが嬉しいのもあるけどぉ、うふふっ」
「こないだ聞いた彼とは、うまくいってる?」
「こっちが夜勤、あっちが日勤とかだとすれ違うばっかりで厳しいぃ、どっかに良い男居ませんかねぇ、こっちの時間に合わせてくれるような~ あははっ」
「難しいわよね時間のすれ違いって、会いたいのに会えない…、私なんかからしてみたら、病院なんて玉の輿ばっかりなんじゃないのって思えるけど、サイトウ先生とかはどうなの?」
「ぇ、サイトウ先生! なんでサイトウ先生なんですか?」
食い入るように見つめてくる看護師に、
「な、なんとなくだけど変なこと聞いた?」
ミィナの額から汗が吹き出そうになっていた。
「へぇ~、なるほど院内恋愛ですね、こればっかりは運命しかないし、言わないで下さいね、ここだけの話しですよ? あの人堅物なんです、真面目一直線でたまに疲れます…」
「あぁそういうこと、確かに、あははは」
引き出しからタバコを取り、思わず口にあてがったミィナ。
「あっダメです、タバコだけは所定の場所で吸ってください」
「あぁごめん口寂しくてつぃ、一日に何本も吸わないから、止めてもいいんだけど、お店閉めちゃったから手持ち無沙汰なの」
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ミィナはサイトウの勤める大学病院で特別に割り当てられた個室に入院させられ、症状がいつ悪化しても対処できるよう、仮住まいのような暮らしをしていた、定期的な検査日以外は、病院側の規則とは無関係に食事や睡眠、外出も自由になっていたが、朝は看護師がやって来て、身の回りこともやってくれるのを申し訳なく思い、自分でやると言っていたが、いつも断られていた。
「シーツだけはね変えさせてね、じゃないと仕事してるのって言われちゃうし、ここでミナヨさんに愚痴聞いて貰えるのが嬉しいのもあるけどぉ、うふふっ」
「こないだ聞いた彼とは、うまくいってる?」
「こっちが夜勤、あっちが日勤とかだとすれ違うばっかりで厳しいぃ、どっかに良い男居ませんかねぇ、こっちの時間に合わせてくれるような~ あははっ」
「難しいわよね時間のすれ違いって、会いたいのに会えない…、私なんかからしてみたら、病院なんて玉の輿ばっかりなんじゃないのって思えるけど、サイトウ先生とかはどうなの?」
「ぇ、サイトウ先生! なんでサイトウ先生なんですか?」
食い入るように見つめてくる看護師に、
「な、なんとなくだけど変なこと聞いた?」
ミィナの額から汗が吹き出そうになっていた。
「へぇ~、なるほど院内恋愛ですね、こればっかりは運命しかないし、言わないで下さいね、ここだけの話しですよ? あの人堅物なんです、真面目一直線でたまに疲れます…」
「あぁそういうこと、確かに、あははは」
引き出しからタバコを取り、思わず口にあてがったミィナ。
「あっダメです、タバコだけは所定の場所で吸ってください」
「あぁごめん口寂しくてつぃ、一日に何本も吸わないから、止めてもいいんだけど、お店閉めちゃったから手持ち無沙汰なの」
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189
妹兄189
「そうですね、でもミナヨさん、手持ち無沙汰を一つ解消して上げましょうか?」
「なんだろう」
「ミィナさん、どストライクだと思います」
「何が?」
「サイトウ先生の気の入れようが違うってこと~」
「えええぇ、それはそうよ~、私だってもう先生以外頼れる人居ないんだから」
「うふふっ」
意味ありげに看護師は笑み、血圧や体温を計って帰って行くとサイトウ医師とすれ違っていた。
「あっ先生おはようございます」
「おはようおはよう、今日も宜しく特に何も無いよね?」
「いぇ、もしかしたらちょっと心拍数が上がってるかもしれませんよ? 先生のも計りましょうか? うふっ」
「ふぅ…」
パタパタ駆けて行く看護師に首をかしげたサイトウは、今日は特に気が重かった、オカムラミナヨにとって必ずしも吉報ではない話をしなければならず、それとは別に、数日前から断られ続けている事も説得しようとしていて、緊張の色は隠せなかった。
テラスに出ていたミィナは、息子が東京へ行く直前に起こしたある事件のことを考えていた、隣に住む仲の良い中年夫婦の部屋で、ある物が盗まれたと連絡が入った日のことだ。
『気づくのが遅かった…、さっき分ったんだ、ミィナの大事な物を盗まれちまってた、預かっていたあの小さな包みだ、そん時うちのとあんたが戸籍交換したメモも見られたと思う…、それに驚くなよ、もっと大変なことが…、あんたは俺が何者なのかなんとなく分かってたよな? 俺な実弾入りの拳銃所持してたんだ、やくざの頃のなごり、そ、それも盗まれちまったんだよぉ~、こんなことするの、あいつしか居ないだろう? アキラにバカは止めろって、どこかに捨てろって説得してくれ! おぃ、聞いてるのかミィナ!』
だが母にはどうすることもできなかった、彼らには二度と会ってはいけない、話すことも、これは自業自得なのだと固く心に誓いを立てていたからだ、手帳や戸籍の件はどうでもよかった、拳銃のことだけが気がかりでならなかったが、今のミィナに祈る事以外、残されたスベはなかった。
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「なんだろう」
「ミィナさん、どストライクだと思います」
「何が?」
「サイトウ先生の気の入れようが違うってこと~」
「えええぇ、それはそうよ~、私だってもう先生以外頼れる人居ないんだから」
「うふふっ」
意味ありげに看護師は笑み、血圧や体温を計って帰って行くとサイトウ医師とすれ違っていた。
「あっ先生おはようございます」
「おはようおはよう、今日も宜しく特に何も無いよね?」
「いぇ、もしかしたらちょっと心拍数が上がってるかもしれませんよ? 先生のも計りましょうか? うふっ」
「ふぅ…」
パタパタ駆けて行く看護師に首をかしげたサイトウは、今日は特に気が重かった、オカムラミナヨにとって必ずしも吉報ではない話をしなければならず、それとは別に、数日前から断られ続けている事も説得しようとしていて、緊張の色は隠せなかった。
テラスに出ていたミィナは、息子が東京へ行く直前に起こしたある事件のことを考えていた、隣に住む仲の良い中年夫婦の部屋で、ある物が盗まれたと連絡が入った日のことだ。
『気づくのが遅かった…、さっき分ったんだ、ミィナの大事な物を盗まれちまってた、預かっていたあの小さな包みだ、そん時うちのとあんたが戸籍交換したメモも見られたと思う…、それに驚くなよ、もっと大変なことが…、あんたは俺が何者なのかなんとなく分かってたよな? 俺な実弾入りの拳銃所持してたんだ、やくざの頃のなごり、そ、それも盗まれちまったんだよぉ~、こんなことするの、あいつしか居ないだろう? アキラにバカは止めろって、どこかに捨てろって説得してくれ! おぃ、聞いてるのかミィナ!』
だが母にはどうすることもできなかった、彼らには二度と会ってはいけない、話すことも、これは自業自得なのだと固く心に誓いを立てていたからだ、手帳や戸籍の件はどうでもよかった、拳銃のことだけが気がかりでならなかったが、今のミィナに祈る事以外、残されたスベはなかった。
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